国際税務の基本ルール②
国際税務の事実関係の3つのキーワード
国際取引ついて課税関係を整理するためには、まず事実関係を整理しなければまりません。どこの国の会社が、どこで、どのような取引をして、どのような利益を得たかを整理します。その中で、重要なキーワードが3つあります。それは、①居住地国②所得源泉地国③所得源泉地国です。
居住地国の判定
日本を始め多くの国では、自国が居住地国である法人に対しては、どこの国で得た所得であるかにかかわらず、すべての所得に課税するという全世界所得課税を基本としています。一方外国法人に対しては、自国で生じた所得に対してのみ課税することとしています。したがって居住地国がどこかを判定するには各国の課税権の及ぶ範囲を決める重要な要素の一つであります。ある法人の居住地国が日本であるかどうかは日本の税法で判定しますが、日本の税法では日本国内に本店又は主たる事務所を有する法人の居住地国は日本とされます。これを本店所在基準といいます。ところが英国のように、事業の指揮管理を行う場所を基準にして法人の居住地を決める国もあります。これを管理支配基準といいます。そうなると例えば東京に本店を有していて、経営の意思決定などをロンドン支店で行っているとした場合、この会社の居住地は、日本との関係では本店所在地の日本であるが、英国との関係で英国であるとされる可能性があります。この場合は日英双方が居住地国になり課税が競合することになりますがこれを解決するのが租税条約の役割になります。
所得源泉地国の判定
多くの国では、自国が居住地である内国法人については全世界課税所得を基本としますが、内国法人でない法人については国内源泉所得に対してのみ課税することとしています。したがって所得源泉地国の判定が重要となります。これをソースルールと呼びますが、日本の税法では所得の種類によって規定されています。(所得税法161条、法人税法138条)例えば事業による所得であれば事業を行う場所であり、配当であれば配当支払い法人の本店所在地になります。ただしこのソースルールについても国によってルールがことなったりして課税に重複やあるいは空白が生じうるのです。この問題も租税条約で調整を行うべきこととなります。もう一つ源泉地国において課税を行う方法として、大きく2つの方法があります。一つはポートフォリオ投資に対する源泉徴収であり、もう一つは直接投資に伴う申告納付であります。ポートフォリオ投資は外国会社が日本の内国法人が発行する社債を買い、利子を受けたとするとこの債券の利子は国内源泉所得になるので、日本は源泉地国として、源泉徴収税を課すことができます。この源泉徴収税は、日本との関係では納め切りとなり、納付されると日本との関係では課税関係が終了します。一方、直接投資から生じる所得については、申告納付の課税方式がとられます。例えば、外国会社が日本に支店を設け、販売業を営んでいるとすると、国内において行う事業から生じる所得は国内源泉所得になります。ここで大切なのは、債権の利子とは違い、支店という物理的拠点を日本に設けていることです。そこには従業員もいて取引を帳簿に記録して管理していることが通常であるので、このような会社は、自ら所得を計算して法人税を申告納付することになります。この会社は日本国内に事業所という恒久的施設(permanent estblishment)を有しているということである。PEを国内に有しているから、国内源泉所得に対して課税されるのであります。この場合、法人税を内国法人に準じて申告や納付を行うのであります。それではPEとはどのようなものなのでしょうか。
所得源泉地国の恒久的施設の確認
PEは、外国法人の事業所得課税における最も基本的な概念になります。まず1号PEといわれる①支店、出張所、事業所、工場等です。次に2号PEといわれる②建設、据付け、組み立てなどの建設作業などのための役務の提供で1年を超えて行うもの。そして3号PEといわれる代理人PEで③事故のために契約を締結する権限のあるものその他これに準じるものであります。
まとめ
今日は、国際課税における事実関係を整理するための3つのキーワードの概要を確認してきました。これらによって事実関係の整理をし、課税関係の整理をすることになります。次回は課税関係の整理及び租税条約についても確認したいと思います。