長年収入を得てきたアパートも修理がだんだん増えてきます。不動産事業に貢献してくれた物件も、やがてリニューアル、又は建替えを検討する時が訪れます。今回は古くなったアパートを建替えするときの経費について解説します。

【1】古いアパートのデメリットはいっぱい
  ◇アパートの老朽化の進行
  ◇古くなったアパートの悪循環とは
  ◇古くなったアパートのキャッシュフロー
  ◇決断!取り壊し時の税務上の経費の扱い
【2】資産損失について
【3】立退料について
【4】取り壊し費用(解体費用)について
  ◇まとめ~取り壊しの必要経費判定
【5】これは大変!知っていないと後悔すること

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【1】古いアパートのデメリットはいっぱい

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国土交通省の統計によりますと木造アパートのリニューアル工事件数は築45年までに集中しています。賃貸経営を3つの時期に分類しますと、新築から築15年までは前半期、築16年~30年までは後半期、築31年以上は終盤期に該当します。前半期には、周辺地域の他の物件に比べて外観や内装、設備も新しく優位に立ちますので、初めの立地と家賃の設定さえ間違わなければ、空室率は低く、修繕費用もかからないので、安定的な賃貸経営が期待できます。
築16年以上の後半期は、内外装や防水、設備などいろいろな部分に老朽が現れてきます。このため、手を入れないでおくと、周辺地域の築年数の新しい物件に比べて、徐々に賃貸物件の競争力が低下していきます。この状況を打開するために、内装、外装、屋上防水・鉄部塗装、給排水設備などの修繕を行い、賃貸物件としての魅力を高める必要があります。築31年以上の終盤期は、賃貸物件の格差が現れます。空室の多い物件がある一方で、まだ元気に競争力を維持している物件があります。

                           
◆古くなったアパートの悪循環
 アパートは、入居者の満足を高めることができれば長く住んでもらうことができます。
手入れが行き届いていれば、空室になっても、不動産仲介業者の物件紹介で、次の入居の申し込みが来ますので、収入が安定します。
しかし、老朽化を放置すると次のような悪循環が発生します。
(1)修理・修繕を行わないので、外観が古く汚くなっていく。
(2)入居者が家賃を高いと感じるようになり退去が出てくる。空室は市場の相場まで家賃を下げて募集しないと入居者が来ない。
(3)家賃を下げると収入が減少するので、修理・修繕の費用を捻出できなくなる。

◆古くなったアパートのキャッシュフロー
キャッシュフロー(CF)とは、
事業の経営活動から得られる現金収入額と現金支出額の差額=手元に残る現金残高
を意味します。これは物件によって大きく差がつきます。
前述のとおり一度悪循環に陥った物件は修繕費、さらには空室、滞納家賃とキャッシュフローは非常に苦しくなります。その場合、取り壊しの決断につながります。

◆取り壊し時の税務上の経費の扱い
 取り壊しによって、資産損失、立退料、取り壊し費用(解体費用)がかかります。これらの中には、所得税の申告計算において必要経費とならないものがありますので注意が必要です。
資産損失、立退料、取り壊し費用については、①取り壊す建物が業務用資産か非業務用資産か、②その取り壊しの目的によって税務上の取り扱いが変わります。
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【2】資産損失について

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業務の用に供されている固定資産の取り壊し、除却、滅失、その他の事由により生じた資産損失(物件取壊時の未償却残額(取得価額のうちまだ減価償却されていない部分の金額)が損失相当額です。)は、その者の損失を生じた年の属する年分の不動産所得の金額を限度として(※)必要経費に算入します。
(※)事業的規模である場合は、全額を不動産所得の必要経費にできます。
  建て替え後の用途は問いません。
(注)不動産の貸付けが事業的規模かどうかは、社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかにより、実質的に判断されます。
ただし、建物の貸付けについて、次のいずれかの基準に当てはまる場合は、原則、事業として行われているものとして取り扱われます。(所得税基本通達26-9)。
① 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10 室以上であること。
② 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

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【3】立退料について

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建物を賃貸している場合に、借家人に立ち退いてもらうため、立退料を支払うことがあります。
譲渡のためであれば譲渡所得の譲渡に要した費用となり、譲渡のためでなければ、過去の賃貸収入の修正と考えられる余地があるため、不動産所得の必要経費となります。建て替え後の用途は問いません。

立退料の取扱いは次のようになります。
1 賃貸している建物やその敷地を譲渡するために支払う立退料は、譲渡に要した費用として譲渡所得の金額の計算上控除されます。
2 上記1に該当しない立退料で、不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かすために支払う立退料は、不動産所得の金額の計算上必要経費になります。
3 土地、建物等を取得する際に、その土地、建物等を使用していた者に支払う立退料は、建物等の取得費又は取得価額になります。
4 敷地のみを賃貸し、建物の所有者が借地人である場合に、借地人に立ち退いてもらうための立退料は、通常、借地権の買い戻しの対価となりますので土地の取得費になります。

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【4】取り壊し費用(解体費用)について

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取り壊し費用は立て替え後、業務用資産として使用する場合、必要経費となります。
ただし、自宅などの「非」業務用資産を建てるための取り壊し費用は、既に不動産所得を生ずべき業務を廃業した後の支出として、家事費として取り扱われますので経費になりません。