皆様もアパート取得の時の消費税の還付スキームということはよく耳にされると思います。新たに賃貸アパートを新築する際に、建物の引き渡しがある年度までに「消費税課税業者選択届出書」を提出して課税事業者を選択します。(法人新設の場合は新設の年度に提出してその年度からの適用が可能です。)年度末近くに建物の引き渡しを受け、賃貸収入は翌年度から入ってくるようにします。ここで建物の引き渡しを受けた年度について自動販売機の設置や金の売買などで95%以上の課税売上をあげることで、消費税の全額仕入れ方式に基づき建物の建築費の全額を仕入税額控除の対象とすることができます。
ところが、このスキームは平成22年の改正により、①課税選択した事業者の強制適用期間 ②資本金1,000万円以上の新設法人の基準期間がない事業年度③特定新規設立法人の基準期間がない事業年度に調整対象固定資産(1個又は1組の税抜き対価の額が100万円以上の固定資産など)を取得した場合は、調整対象固定資産を取得した課税期間から第三年度の課税期間まで、本則課税による申告を行うルールとなり、課税売上の変動による税額調整が適用される場合は、還付を受けた税額が取り戻されることになりました。
 この場合でも。「消費税課税事業者選択届出書」を提出して2年以上経過している場合や「消費税課税業者選択届出書」を提出せずに、課税事業者になる場合の二つの場合に建物を購入・新築すれば還付は可能でした。後者の場合には法人の場合だと前々事業年度で1,000万円超の課税売上をあげる必要があり、金の売買等が考えられました。また、前者の場合には「消費税課税事業者選択届出書」を提出して最短で1年か月最長で2年間の間、物件を購入できないという状況になるのですが、いい物件が出ればすぐにでも購入したいし消費税の還付も受けたいというのが投資家の心理であります。そのために多くのコンサルタントと呼ばれる人達は事前に消費税還付の要件を具備した法人を複数設立しておきこの法人を投資家に譲渡したりしていました。
 しかし、平成28年の税制改正によって高額特定資産(税抜1000万円以上の棚卸資産及び調整対象固定資産)を取得した場合には、取得した日の属する課税期間の初日か3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの間は「消費課税事業者選択不適用届出書」も「消費税簡易課税選択届出書」を提出することができなくなりました。この規定の導入により、これまでの消費税還付は税額調整の規定を強制適用させられることになりました。
 税額調整の規定とは、建物取得1年度の課税売上割合と取得1年度から3年度までの売上を通算した通算課税売上割合を比較して変動率が50%以上で変動差が5%以上の場合に1年度の消費税還付税額を再調整することとなります。
  この期間に駐車場の賃料や金の売買を行うことでこの期間の家賃収以上の売上をあげることやエアビーアンドビーに貸し出しをして家賃収入を課税売上に変えてしまうというような手法も考えられているようです。金売買などはそもそも法人としての経済合理性がない行為という理由で、租税回避になるかもしれないという考え方もあるようですが、やはりそれはそれで合法的な取引でもあり消費税法には法人税法132条のような包括的な否認規定は存在しませんので、そのような議論も起こってはなさそうです。おそらく今後もこのようなスキームを取り締まる改正が行われていくのかもしれません。